BLASSREITER 斧の柄朽ちつ2008-07-15 Tue 22:06
14話『聖者の選択』を観た。
13話がジョセフのバックボーンだとすれば、この回はザーギンの為にある回だろう。 これを観たがために、ザーギンを単純に憎むことができなくなる。 それにしても、ジョセフが明るい。 「スッゲー」連発。 「Wスゲー」が「Wすぎっ」に聞こえた自分は脳内変換で「W好き」に! 「W好き」=「サーシャもザーギンも大好き!」 芝生の上ではしゃぐ彼らが微笑ましくて可愛くて、現在のジョセフがザーギンに対して専守防衛してしまっても仕方ない気がする。神父様に次いで義人だったザーギンを、ジョセフは諦めきれないのだろう。 姉サーシャとの再会はやや唐突に感じた。 ロザリオと名前だけで分かるものなのか、と……。ジョセフが生まれた時に特別に作らせたロザリオって、純銀製なのだろうか。 靴も食べるものもなく親子三人で彷徨うぐらいなら、ジョセフの命を繋ぐためにとうに食べ物と交換して手放していてもおかしくなかった。それに、サーシャがロザリオの件を覚えているためには、姉と弟の間には年齢差がある程度必要だろう。サーシャが若く美しく、18歳くらいにしか見えなくて、少しひっかかった。 あんな美人が夜一人歩きしてはダメだろう……移民だろうと地元民だろうと。 未来設定なはずなのに、彼女が護身用の武器一つ持っていないことにも違和感が。 機密情報握っている研究者など、ボディガードの一人や二人、密かにつけておくのが普通だと思う。薬を盗んだ時にワラワラと押し寄せた警備兵の一人でも、私服に着替えさせてガードさせておいてくれていたら、悲劇は防げただろうに。 彼女へのガードを組織が意図的に外していたとしたら、サーシャは既に、局長に「処分やむなし」と目されていたことにならないだろうか。 そして彼女の死後、その遺体は局長の意向で、ザーギンの協力の下、人体実験の材料になったのでは……? バリキリー(?)に乗って雪原のジョセフの前に現われたサーシャ、色素を欠いた白髪、その左右の色違いの瞳は、彼女がただ単純に蘇生されたわけではないことを現している。 彼女自身の赤と、ザーギンの緑のオッドアイ……。 緑色の瞳を宿した彼女は、表情が乏しくまるで別人だ。記憶がないのだろうか? クローン体か? 壊疽した部分を補うためにクローン培養した組織を移植し、生体反応がある状態でナノマシンを体内に注入したら彼女のような状態になるのか、それともサイバネティクスを利用した義眼か? モデム搭載AIでガルムと連携してるとか? 雪原のジョセフの前にいきなりサーシャやメイフォンが現われたのは、常時ガルムの位置がGPSで組織にモニターされていたからか。 また、謎が一つ生まれた。 絶望に虚脱したザーギンを組織へと勧誘した局長は、最初彼をメンバーの一員として参画させるつもりだったのだろうが、人体を兵器化するプロジェクトにサーシャの死体や子供達のデータを使われている実情を知り、反逆の旗を掲げることにしたのかもしれない。 局長または組織の支配する世界を終わらせるために、自らデモナイズし、弱さを捨てた。 黙示録について語るお婆に彼が共感したのは、神の名の下に破壊を行なう使徒の存在を知ってしまったからだろう。 局長は、何かを計画している。 ザーギンはその計画を止めるために早急に力をつける必要があり、医学生時代の知り合いベアトリスやその他に支援と隠れ家を求め、反勢力を育てているのだろう。 しかし、ジョセフは局長や組織の真意を知らない。 一見、局長も彼が属する組織も罪を犯していないようにみえる。 ガルムを与えてザーギンを追うように言った局長に対して、ジョセフが姉サーシャの研究が兵器利用されたことを知りながら唯々諾々と従ったのが残念だ。姉の手紙に書かれていた「人体を兵器化する研究」がどういうことなのかジョセフ自身分かっていなかったのだろう。 ジョセフには、悲劇の連続にザーギンが壊れ、暴挙に走ったとしか見えていなかったのかもしれない。 まぁ、善意でサーシャが移民へ流した薬が市販されている通常のものならいいが、もしナノマシン込みの新薬だった場合、デモニアック大量発生に繋がる事態になる。 移民が持っていた怪しげな薬を買うのは、同じ移民か流れ者か……。 XATが設立された経緯はこれで分かった。 局長のマッチポンプ……。 火元が同じなら、もっと対処法が分かっていただろうに、局長のせいでXAT隊員たちや警官隊が無駄死にしたと思うとやるせない。 そもそも、XATの名前からして妙だった。 XAT=「XENOGENESIS ASSAULT TEAM」 ![]() 「Xenogenesis」という言葉をExite翻訳すると「異形発生」となった。 しかし、さらにこの言葉を分解して考えてみると別の意味が湧いてくる。 「xeno」→「xenophobia(外国人嫌い)」 「genesis」→「創世記、起源」 これでは一般に「外国人=移民=Demoniac」というイメージが浸透してしまっても仕方ない。外国人排斥運動を後押ししているような名称。名づけた段階で、犯人を限定しているみたいだ。局長の所属する組織の一部かもしれないCNSニュースによって、XAT設立前に移民のデモニアックが起こした凶悪事件について散々報道されたのか、XAT設立時にそのネーミングに誰も疑問を感じないほどイメージは定着していたと思われる。 局長はXATを通して、ゲルトのデータを採取し「軍直属の医療機関」に移送させたり、マレクを脳死判定して「どこか」へ移送したりと都合のいいことばかり。どれだけ確信犯なんだ? 踊らされているジョセフが可哀想だ。 ナノマシンで再生後、直ぐにガルムを与えてザーギンを追跡しろだなんて、どれだけ鬼畜なんだ、局長! せめて着る服を与えてやれ。風呂に入らせてやれ……。お腹いっぱい食べさせてから、ジョセフを出発させて欲しかった。 それともDemonizeした人間には食べるものも必要ないということか? エンディングの歌い出し、「あの日、星は流れて……」が切ない。この星がサーシャにも、子供達、XAT隊員の命にも思われて、どれだけ人の命が奪われればこの物語は終結するのかと不安になる。 生き残るのはアマンダだけなのか? EDの塔はリーグ戦表でも、神に挑むバベルの塔でもなく、戦いを終えた戦士たちの霊廟なのか……? 子供達を襲ったのが猩紅熱というのが、また時代設定を曖昧に。 本当に未来なのだろうか……。 ナノマシン開発する以前に、食糧問題に手をつけて欲しいぞ、研究機関。 痩せた土地でも大量のジャガイモが収穫できるように遺伝子操作するとか、移民が国内で犯罪を繰り返さないように食料の配給と引き換えにチップを埋め込んで、新薬の開発に利用し生体情報をモニタリングするとか。 子供が路上にチョークで落書きして遊んでいるが、チョークを買うお金があったら屋台で菓子の一つでも買うだろう。ザーギンやサーシャが、大学の教室でパクッてきたか、1箱買って与えたか。 移民が一家族一部屋確保できているのが不思議だ。本当に貧しければ、家賃を節約するために、複数家族が同居し、床や椅子で毛布を被って所狭しと寝ることになる。移民は臭いからとか家賃を滞納するからと、賃貸契約を結ぶ時も差別され、住居を確保するのが難しいはずなのに、部屋が綺麗だし比較的広い。熱に苦しむザザがいるのが、教会の中の部屋なのか、移民居住区なのか、よくわからなかった。 子供も、パン一つと薬を交換するくらいなら、路上でチョークで遊んでいる場合じゃないだろう。 チップを求め、路上に停まっている車の窓を拭いたり、靴磨きをしたり、合唱を練習して広場で歌うとか色々しようとするだろう。飢えていたら、用もないのに市場や飲食店の周囲をうろつき、腐った果物や残飯漁りもいとわない。そういうものだろう。 日本のホームレスがダンボールハウスで新聞被って眠り、風呂に入れもせず残飯漁りしている状態なのに、この物語の移民たちは住む場所が……。 移民の子供達が、リヤカーを押して瓶やカンの廃品回収をしてお小遣いを稼いでいるシーンがあったら……、市民の投げた瓶や缶を大切そうに走り去るシーンでもあったなら、もう少し納得できたのかな……。時代設定や貧しさの基準がよくわからない。 雨に濡れながら子供達の棺桶を大人たちが運んでいる場面があったが、棺桶代は誰が出したんだ? そもそも薬を食料に変えるとしたら、日持ちしないパンよりも少しずつ切って食べれるチーズかハムだろう? パンなんて直ぐ硬くなるし、カビが生えるし、焼きたてじゃないと不味い。 この脚本を書いた人間は、本当にひもじい想いをしたことはない、平和の国の人間だ。 人身売買にまで至っていない。 実の親による間引きや捨て子もない。 今の日本で進行しつつある数々の悲劇とは無縁だ。 パンと薬を交換した子供を哀れには思っても、感情移入することはできなかった。 先週の土曜日、『ホームレス中学生』というドラマが民放で流れた。 派遣社員がネットカフェ難民になっていたり、日雇い労働法が変わったり、官僚の使い込みで福祉が縮小を余儀なくされたりと、哀しさを増していく日本。 i-PHONEの発売に列為す人々がいる一方、プリペイド携帯電話や月々の支払いが1000円以下に抑えられる格安携帯を利用する人々もいる。薬代を惜しんで医者にかかるのを控える人々がいる。ガソリンや水道代、光熱費の値上げで、年金暮らしが回らず、飢え死にしたり心中したり……哀しい運命を辿る人々がいる。国の中枢にいる人々に、これらの人々の痛みは届かない。そうして貧富の差が、無数の命を奪っていく。この国に未来はあるのか? その未来は一限りの人達の為のものではないのか? もし今、医者要らずの体になれる薬があると言われたら、きっと自分は飲んでしまうだろう。 ザーギンの足を掴んで「命は生きるに値する」と言ったジョセフ。 「どれほど過酷な世界であっても生きる意味はある」とジョセフを諭したミュラー神父。 「どんなに行き詰ったつもりでも、生きる道はある」と言ったゲルト。 そのゲルトの言葉を糧にしていたヘルマン。 この言葉の光を胸に宿しているかどうかが、Demonize後の状態を左右する気がする。 Demoniacとなっても人の心を失わずに生きていこうとするunripe hero. 公式HPに、 「ある者は自分が信じる正義のために、ある者は純粋な力に魅せられて、ある者は野望実現の切り札として、ある者は復讐の道具として」デモニアックになったと書かれていたのを、自分は「正義のために」がジョセフ、「純粋な力」がゲルト、「野望の実現」がザーギン、「復讐の道具」がマレクと各々当てはめて考えていたが、「野望の実現」が局長ヴィクター・シュタッフス、「正義のため」がマドワルド・ザーギン、「純粋な力」がウォルフ・ゲイリグ、「復讐の道具」がマレク・ユルドゥルム・ウェルナーだったのかもしれない。 また、ヘルマンがヘリ炎上で死なずにベアトリスに拾われていれば、ゲルトのデモ化と死の原因だったブルーやXATを壊滅させた隊長ウォルフに対して、復讐の鬼と化す可能性もある。彼が、14話で描かれたコトの経緯と局長の企みを知ったら黒変してもおかしくない。暴走したヘルマンは、アマンダでもマレクでも止められない気がする。復活したゲルトが盾になり、ヘルマンを受け止めることができれば或いは……。 13話を観た段階では、ザーギンを倒せば戦いは終わるように思っていたけれど、局長の組織が存続している限り、悪夢は続きそうだ。 局長の洗礼名は何だろう? 12使徒のペテロなのだろうか? 自分は脇腹に手を突っ込んだ疑い深きトマスが好きだったりするのだが、初期キリスト教の分派潰しをしたペテロはあまり好きじゃない。 どんなに奇跡が起こり素晴らしい教えが広まろうと、後継者が組織存続のために教えを捻じ曲げたらアウトだ。中世の異端審問官の魔女狩りや、聖地奪還を大義名分に侵略戦争を起こした十字軍、植民地で為した数々の十戒破り、一般信徒相手の高利貸し。それら歴史上の出来事のどこに、差別や争いの根を絶ち赦しの教えを広めたイエス・キリストの精神が引き継がれているというのか? 自分が良いと思うことを好き勝手にやっていた旧約時代と何が違うというのか? 神の名前がヤーウェからキリストに変わっただけだろう。 組織を維持するための無数の掟を組織に課す、新たなパリサイ人、強奪するサウロ。 局長の組織の掲げる理想と実際の活動内容にズレがあったからこそ、ザーギンは離反したのだろう。ザーギンは、カトリックに対してのプロテスタントのような立場か。 根幹にはジョセフと同じように全ての命を救いたいという願いを抱いていただろうに、子供達の命、サーシャの命が兵器開発研究の犠牲になったことで無力感に襲われ、組織打倒の目的のために手段を選ばない非情な男に変わってしまった。(マレクを「つまらない出来」と評価したザーギンには、過去の面影はない。) 火炎瓶が投げ込まれた教会で脱出口を求めてジョセフが振るった斧、ザーギンが子供達の命を救う薬品を盗むために振るった斧。 二つの斧は同じ目的のために振るわれた。 が、それも虚しく子供達は死んでしまった。 破壊の力は正しく使われなければならないものだろう……。ジョセフは姉の研究が兵器開発に利用されて今後何が起きるかも、ザーギンが生きた兵器と化し研究施設を破壊した真の意味もおそらく分かっていない。 「裁きの日」が何を意味していることか……。 局長が吹き込んだ「ザーギンが人類を滅ぼす」という言葉を信じてしまっているジョセフ……事情を明かされないまま、広がってしまった争いを終わらせるためにジョセフが出来ることが人格というリミッターを解除し局長の操り人形になることだけだとしたら救いがなさ過ぎる……。 ザーギン側の事情が語られた現在、今度は局長組織側の理念や実態を描いてもらわなくてはバランスがとれない。 両者の間で踊らされていることにジョセフが気づくのは、サーシャに裏切られてからか、人命が失われてからか。 局長組織にマレクが運びこまれているとしたら、アマンダやジョセフを動かす格好の人質になる。 シビアな展開が待っていそうだ。 ジョセフの感染シーンはもう少し色気があってもよかった。第九話の悪夢での怪しさが全くなく、ザーギンとジョセフの関係を中心に物語を見ている女性ファンにとっては描写不足だったろう。 その代わり、ずぶ濡れの虚脱状態のザーギンに局長が「ザーギン、君は心も体もこの崇高な行為を成し遂げるに相応しい」と迫るシーンがやたら妖しく、誤解を生みそうだった。 パンにスポットライトが当たっていたところ、もし音声がなければ、毒入りパンで移民の子供達が大量死したように解釈しかねなかった。海外向けに字幕をつける時は注意が必要かも。 メイフォンのパーソナル・カラーが黄色から緑へ変わって、どこか大人っぽい印象になった。結婚後のフラウ・ボウかヤシマ・ミライを連想させる。チャイナ・ドレスとか着せてみたい。男性ファンのために太股チラリの回し蹴りシーンがあればもっといい。 ウォルフはベアトリスのラボで、XATの生き残りの再生を観察していたのだろうか。三つ並んだ水槽のうち、左の一つだけが明確な形を成していた。 アルもブラッドも12話で炭化していなかった。レーネの遺体も回収可能だった。 気化爆弾(?)が落とされる前に、最後の最後で仲間意識を垣間見せた隊長が彼らを伸縮自在な腕でシェルターへ運んでいたら……もしくは、その高熱に堪えうる隊長の体の下に彼らを隠していたなら……生存の可能性は残っている。 予告に出ていた筋肉ムキムキ男は局長組織の騎士の一人なのか。問答無用に正義の名の下に凶刃を振るいそうな、容赦のない顔をしていた。 ヘルマンがいたら、アマンダの代わりに食って掛かっただろうに。 今にして思えば、第三話のラストでジョセフが見せた微笑は稀少だった。 「あの男(ゲルト)は……もしかしたら、救えるかもしれない」 ジョセフはどれだけ孤独で望みのない旅を続けてきたのだろう? XATに追われながら、どれだけ真実を語りたかったことだろう? アマンダに話ができたことでジョセフは心の重荷を少しでも軽くできたのか。 今後のアマンダとの関係に注目&次週のOPにゲルトとヘルマンを期待。
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